葉ねぎに輝く雫は、はちみつ味? 伝統野菜-法性寺ねぎ

山下智弘

朝つゆのように透き通るしずくは、とろっとした蜜の味

3月のまだ少し肌寒い季節、青々と群生する岡崎市法性寺町のねぎ畑。法性寺ねぎの名前の由来はこの地名から来ています。

よく見ると葉葱の表面にいくつもの丸々としたしずくが輝く法性寺ねぎ。一見すると非常に透明度が高く透き通っているため朝つゆのようにも見えます。しかし、そのしずくを指で触れてみるととろっとして粘度が高く、それが蜜だということがわかりました。口にすると非常に甘く、はちみつに近い味わいが広がります。この溢れ出るような甘みこそが法性寺ねぎの特徴です。年中栽培さされていますが気温が10度を下回る冬の時期には蜜が凝縮されより一層甘みが増します。

九条ねぎの親戚?

法性寺ねぎのはじまりは江戸時代まで遡ります。法性寺は室町時代の末期、七堂伽羅と一山六坊を備えた大寺院でした。しかし、松平広忠(家康誕生時)は岡崎城東北の鬼門の鎮護として現在の岡崎市六供町に一山六坊を移し、法性寺には大日堂が残されました。その境内に当時比叡山延暦寺にて修行をしていた僧侶が京都から持ち帰った九条ねぎを植えたことがはじまりといわれています。こうして細々と植えられていた法性寺ねぎも、明治末期に入ると本格的な栽培がはじまります。今では、16軒の生産農家があり、そのすべてが岡崎市内で栽培されています。

愛知の伝統野菜 本物の法性寺ねぎを守るために

法性寺ねぎは、一般的なねぎのような種子からの栽培ではなく株分けという方法で栽培されます。2本の苗を植えることで10本程度まで増えるという性質を活かした方法で増産をしていきます。この方法にはデメリットもあります。例えば、市場に出ている法性寺ねぎを同様の方法で畑に植えることで、どんどんとねぎがコピーされていってしまいます。もちろん農産物なので各種生育条件が揃わなければ味や見た目をそのままコピーすることはできません。しかし、現実には法性寺ねぎから株分けした偽物のねぎが法性寺ねぎとして販売されています。

そうした、状況から本物の法性寺ねぎには「愛知の伝統野菜」認定マークと「岡崎市ブランド推進品目」の認定マークを施した緑色のラベルが巻かれています。

法性寺ねぎは人の手でしかなかなか育てられない貴重な野菜です。無菌苗を機械で育てる試みもされていますが、繊細な性質から不揃いなねぎが出来上がってしまいます。また、一般的なねぎと比べ非常に柔らかいため、市場に出荷する準備段階の枯れ葉の除去等もすべて手作業で行っています。

人の手によって生み出される本物を後世まで受け継ぎ、地域の伝統ブランドを守り続けていってほしいものです。