リニア中央新幹線~中部圏における展望と課題

加藤 高伸

◆リニア中央新幹線のメリットの本質は?

◆本レポートは、リニア中央新幹線の開業に関して、国・各自治体(特に愛知県・名古屋市)やシンクタンクから多数の構想案等レポートが発表されているが、それらの骨子を要約したものであり、その中で語られている中部圏の課題と展望、施策の方向を中心にまとめている。

・リニア中央新幹線のメリットポイントを集約すると、以下の3つとなる。

❶航空機並に速いこと =  東京~名古屋間を約40分で結ぶことができる

❷利便性が高いこと    =   航空機を比較すると、街なかで乗れて 天候にも左右されない

❸料金が高すぎない   =   予定では航空機より安く、現状の新幹線よりやや高い水準

・つまり、これらの特性から、飛行機や現在の新幹線を利用する人がリニア新幹線を利用する可能性は非常に高く、「東京・名古屋」が、『一体的な都市圏』になると予測される。

◆中部圏がめざすのは「スーパー・メガリージョン」

・『一体的な都市圏』は名古屋側からすれば、ビジネスにおいては移動エリアが飛躍的に広がり、商談で訪問できる事業所のエリアが拡大し、その数も増える。ただし、東京側からすれば、名古屋は首都圏内の一都市というポジションとなる。

・また、首都圏と比較した場合の名古屋市の住宅価格やオフィス賃料の値打ち感、ゆとり感は魅力的であり、市場が活性化する可能性を秘めている。

首都圏・関西圏そして中京圏が一体となった都市圏を≪スーパー・メガリージョン≫と規定しており、リニア開業を機に、それが誕生するものと期待されている。それらは「あいちレポート2015」に記載されている。

・国土交通省の国土のグランドデザイン構想においても、地方創生とともに≪スーパー・メガリージョン≫は基軸となっており、国もこの構想を後押しする姿勢である。

・今年1月、愛知県で「平成28年度 国土政策フォーラム in 愛知『我が国の成長をけん引する中京大都市圏づくり~対流を湧き起こすスーパー・メガリージョンのセンターを目指して~』」が開催され、大村知事が基調講演をされている。そこで、この構想に関連する主要施策が以下のように述べられている。<項目のみ抜粋>

❶リニア中央新幹線の開業インパクト ❷名古屋駅のスーパーターミナル化と鉄道ネットワークの充実・強化 ❸広域道路ネットワークの整備 ❹中部国際空港の機能強化 ❺港湾の機能強化 ❻自動車産業の高度化 ❼航空宇宙産業の振興 ❽愛知県国際展示場の整備 ❾地域魅力の発信と広域観光の推進 ❿第20回アジア競技大会

・上記のように、愛知県としては、リニア開業を機にビジネス環境の充実、主要産業のさらなる発展を目指し、日本の中でのポジションアップを図るために、具体的な方針を打ち出している。

◆中部圏の産業構造とリニア新幹線

・リニア新幹線開通による、一般的な、経済波及効果は、移動時間の短縮による移動空間の拡大による、ビジネスチャンスの増大が最も期待されるところであり、現在の試算では開業から50年間で10兆7千億円の経済波及効果があると予測されている。

・こうした効果が表れるには2つの条件があるということで、1つはスピードアップを享受できる地域であること。2つ目が産業集積の高い場所であること。当然ながら、これらの条件を満たして、1番効果が大きいのは東京都であり、次いで愛知県と予測されている。

愛知県を中心とした中部圏は、産業のなかでも製造業の割合がかなり高く、ものづくり圏を形成している。特に自動車関連産業、航空宇宙産業。ヘルスケア産業の集積が特に高いため、リニア開業をきっかけとして、それらの産業のさらなる活性化・拡大化が期待れている。

◆リニア新幹線をめぐる中部圏の課題とは?

・リニア新幹線の開業が品川~名古屋間より遅れる予定の関西では「このままでは取り残される」と、大阪までの同時開業を求める声が上がっている。だが、実は“危機”を感じているのは関西だけではない。名古屋では今、品川~名古屋間がわずか40分で結ばれ“1つの経済圏”になることで、名古屋のヒト、モノ、カネが首都圏に吸い取られる“ストロー現象”が懸念されている

・2013年9月18日、JR東海はリニア中央新幹線の中間駅やルートの詳細発表をしたが、これを受け、名古屋市の河村たかし市長が放った言葉は「大きなチャンスだが、どえらい危機!!」だった。これもそのストロー現象を予測しての発言と捉えられる。

・こうした「ストロー現象」は大きな課題ではあるが、それ以外にも愛知県には問題がある。それは、リニア開通後も、ものづくりの中心地である三河方面の利便はそれほど向上しないだろうということ。図4で示したように、現状では、リニア新幹線の駅ができる名古屋駅までの所要時間は、三河方面からかなりあり、リニアの恩恵が少ないという問題がある。

・これは根本的、かつハードルの高い課題であるが、これに対する解決策を愛知県・名古屋市および産業界が協議して、解決の方向性を見い出そうとしている。

◆中部圏が日本をリードするために ~スーパーターミナル・ナゴヤ構想 他~

・昨年2016年9月に名古屋市が発表している「名古屋駅周辺まちづくり構想」のサブタイトルは、『めざすはスーパーターミナル・ナゴヤ!』と題されており、ダイナミックなまちづくり構想ということが伝わってくる内容となっている。図6にあるように、名古屋市と、愛知県・国や鉄道事業者・開発事業者・地下街会社等と連携して各プロジェクトを進行させる予定となっている。

・ストロー現象の防止策としては「魅力ある地域と魅力ある都市をつくること」を目指している。内容としては3つの要素が集約される。❶乗り換えの利便性を高めた名古屋駅のスーパーターミナル化 ❷名古屋駅周辺の再開発 ❸名古屋市の核となる地域活性化・・・以上の3つである。

・ただし、この名古屋市の構想はあくまでも名古屋駅および周辺の整備・開発であり、先に挙げた課題である三河地域と名古屋駅間のアクセス改善については、愛知県が主導する≪スーパー・メガリージョン≫の構想が不可欠であり、それと名古屋市の構想が一体化した推進が望まれると考える。

・リニア新幹線の大阪までの延伸・開業は、品川~名古屋間が2027年に先行開業してJR東海の経営体力が回復したあとの2035年に着工し、その10年後の2045年に開業する計画であったが、昨年8月には、国が財政投融資を実施し、大阪までの開業時期を8年ほど前倒しさせる方針を示したという報道があった。いずれにしろ、中部圏はこの大阪までの延伸までの間に、リニア新幹線開業を見込んだ各種地域開発・アクセス改善を進めて、関西圏が勢いを持つ前にリードしておく必要があるだろう。将来的な中部圏の発展の鍵がそこにあると言えるだろう。